人権擁護啓発ポスターコンクールは、府内の小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・特別支援学校及び外国人学校に在籍する児童・生徒が、人権をテーマとしたポスター(絵画)の制作を通じて基本的人権について理解を一層深め、人権尊重の精神を養う機会とするため、昭和59年度から実施しています。
令和4年度の人権擁護啓発ポスターコンクールには、163校から4,027点の応募をいただき、入選者が以下のとおり決定しました。
12団体賞受賞作品の紹介
知事賞
京丹後市立網野中学校2年
野木 萌絵香(のぎ もえか)さん
講評
画面全体から光を感じられ、見る人にとてもポジティブな印象を与えるポスターです。「みんなでつくろう 笑顔のまち」という言葉は、柔らかい手書き風の文字で影をつけて読みやすく、その下のたくさんの顔は、人種や性別、年齢の異なる人々の顔が象徴的に描かれています。一人一人の顔には、非常に繊細に陰影が入れられており、単純ながらも立体感があり、見入ってしまいます。頬や頭などに入れられた白い光や、ところどころにあるきらめきの光が効果的で、人々の笑顔を一層きらきらと輝かせています。あらゆる世代の人々が、いつも笑顔で暮らせることの幸せや、そんな社会をつくることの大切さを呼びかけてくるポスターです。
京都市長賞
京都市立開睛小中学校8年
梶原 弥々(かじわら やや)さん
講評
老若男女、人種、障害の有無にかかわらず、画面中央の地球上で、手を上げ集う姿が描かれています。背景は温かみを感じさせるピンクを中心に着彩されており、中央の人物たちの心の中の温かさを感じる効果があります。標語の内容もストレートに作者の思いが伝わってきます。画面下部の地球がとてもシンプルに描かれているので、見る人の目線が自然と中央から上部へと流れる効果もあります。これらの要素から、見る人に伝えたい思いが一目見てわかりやすく伝わる中学生らしい素直な思いを表現したポスターとなっています。
京都府教育委員会教育長賞
京田辺市立草内小学校5年
村上 穂乃歌(むらかみ ほのか)さん
講評
今や、誰でもかかりうるコロナ感染症と隣り合わせの日常を、子どもの視点から見事に切り取っている作品です。「治ってよかったね。また いっしょに 遊べる!」という言葉がとてもあたたかく、こんな言葉をかけてもらったお友達は、それまでの不安な気持ちが吹き飛ぶくらい、本当に嬉しい気持ちになるだろうと思います。水彩絵の具やパスという、これまで使ったことのある画材を使い分け、色彩や色の置き方、水加減など表し方を工夫して、画面の隅々にまで気持ちを込めて丁寧に描かれた心温まるポスターです。
京都市教育長賞
京都市立岩倉北小学校4年
講評
髪や肌の色も年齢も違うたくさんの人々の笑顔が集まって一つの大きな笑顔をつくり出すという、ポスターとしての発想が見事です。「みんな笑顔 みんな幸せ」というシンプルな中に思いがつまったキャッチフレーズがくっきりと浮き出てきて、見る人の心に残ります。色づかいのバランスがよく、見る人が温かい気持ちになってくれる形や色を工夫してつくり出している作者の姿が浮かんできます。
京都府市長会会長賞
亀岡市立千代川小学校2年
下西 大(しもにし たいき)さん
講評
「だいじょうぶ」という言葉は、いろいろな場面で使われます。友達を気づかうときには、「だいじょうぶ?」。友達を励ますときには、「だいじょうぶだよ」。友達との関わりの中で、思いやりのやさしい言葉をかけている場面を描いています。2人は手をつなぎ、背景は、柔らかいピンク色をぼかして描かれており、やさしい気持ちを効果的に伝えています。仲間がそばで声をかけてくれることで勇気や元気がでる。そんな児童の気づきを感じる作品です。
京都府町村会長賞
井手町立井手小学校1年
佐藤 晴登(さとう はると)さん
講評
まだ絵の具の扱いには慣れていない1年生ですが、一生懸命色を作って塗っています。中央のしあわせそうな笑顔の人物が作者でしょうか。お友達と遊んでいる楽しい声が聞こえてきそうです。葉っぱの上に乗って遊んでいるユーモラスな画面は、見る人の想像力をかき立てます。「ずっと いっしょだよ」とかけがえのない友達を思うやさしい気持ちが感じられる作品です。
京都府人権擁護委員連合会長賞
長岡京市立長岡第七小学校5年
三田村 茉優(みたむら まゆ)さん
講評
ぱっと見たときに、大きな「手」が目に入ってくる、大変インパクトのあるポスターです。その手はハートを形作っていて、手の内側は明るく、奥にある指は暗い色にしてあり、単純に見せながらも立体感があります。その手の中に、人種や性別の異なる多様な人物が象徴的に描かれています。「差別のない幸せの世の中」を、自分のこの手で作り出していこうという作者の思いが伝わってきます。背景には、楽しんで描いた面白い模様が、細かく丁寧に描き込まれてあり、手前の手と細かい背景との対比が面白く、思わず見入ってしまうポスターです。
京都商工会議所会頭賞
京都市立開睛小中学校8年
光山 和夏(みつやま わか)さん
講評
右半分のあざやかな様々な花、背景は彩やかさをおさえた色を左半分に構成しています。中央には左向きの横顔が描かれ、パッチワークのように数種類の色が貼り合わせているように描かれています。花も色や形を一つずつ変化させ混色も美しいです。左右のコントラストをはっきりと分けた構図や顔の向き、花の種類、配置、着彩の工夫、標語の内容から『個性を大切に』というメッセージがしっかりと伝わってくるポスターとなっています。
京都府商工会連合会会長賞
京丹後市立大宮中学校1年
岡田 芽依(おかだ めい)さん
講評
近年は、コロナの影響や、デジタル化の流れによって、人と人との距離を感じることが多くなりました。人と人とが対面で直接思いやりをもって関わっている場面を描いています。そしてその方向に力強く大きな一歩を踏み出している姿を重ねています。支え合い助け合う社会へ向けて、まずは一歩踏み出そうよ、と訴えかけているようです。
京都府中小企業団体中央会会長賞
京都市立洛央小学校5年
植田 明莉(うえだ あかり)さん
講評
「笑顔の花をさかせよう」というキャッチフレーズにぴったりの、鮮やかでくっきりとした色使いと人物の明るい表情が印象的なポスターです。水彩絵の具と筆を丁寧に扱いながら、細かな部分まで粘り強く描くことができました。大小さまざまな大きさや形の向日葵(ひまわり)の配置を工夫することで、女の子たちを包んでいるような温かい空気感をうまく表現しています。
京都府農業協同組合中央会会長賞
京都市立下京渉成小学校6年
岩城 梨花(いわき りんか)さん
講評
誰もがもっている「おもいやり」の気持ちを、少し勇気をもって相手に届けることで幸せな気持ちや嬉しさが広がる一歩になるのだというメッセージを、温かさを感じる形や色、ぼかしなどの表現方法を用いて豊かに描いています。どの色のハートの中にも、人と人とのつながりが描かれ、誰かを大切に想う気持ちが心の懸け橋になっているのだということを背景の虹が伝えてくれているようです。
京都府社会福祉協議会会長賞
与謝野町立山田小学校2年
牛田 旺汰(うしだ おうた)さん
講評
力強いクレヨンのタッチと、鮮やかな色使いが印象的なポスターです。友達と遊んでいる時の気持ちになって、たくさんの色を使って楽しく描いています。「みんなとなかよし」という文字の色も虹色になっていて、にぎやかな声が聴こえてきそうです。「みんなとなかよし」で嬉しい!楽しい!そんな笑顔が広がっていくといいな、と見る人にも思わせてくれる作品です。
応募作品全体講評
今年も多くの学校で「人権擁護啓発ポスターコンクール」に取り組んでいただき、たくさんの力作が集まりました。本コンクールは、基本的人権についての理解を一層深め、人権尊重の精神を養う機会とすることを目的として実施しています。また、自分の思いを作品に表現するという図画工作や美術の学習の機会としても活用されています。1枚1枚に表れる作者の人権に対する思いを感じ取りながら温かい気持ちになったり、表し方の工夫に見入ったりしながら、審査をしました。
小学校低学年では、身近な人との関わりの中で感じた嬉しさや楽しさなどを、その時の気持ちになって夢中で表しているような作品が目を引きました。学年が上がるにしたがって、表したいことを明確にもち、その内容に合わせて形や色づかい、材料や用具の使い方を工夫するなど、自分なりの意図をもって表現している作品が多くなりました。小学校高学年では、学校や地域など、社会の一員としての意識をもちはじめ、他の人の気持ちを考えたり、伝えたいことやその目的をも考えて配置や色の組合せを工夫した作品が多くなりました。中学生や高校生になると、さらに表現が多様になり、時には大胆に場面を切り取ったり、あるいは再構成したり、要素を絞ったりして、ポスターとして他者にどう伝えるかを考えた作品が多くなりました。
子ども達の作品は、それぞれの子どもがこれまで経験してきたことに、その時々の発達段階で学んだ知識が加わり、そこに思いや願い、夢、希望という目に見えないものが合わさって生み出されています。子ども達が、その時だからこそ描けるポスターを、1人1人のメッセージを感じ取りながらご覧いただければと思います。
令和4年度受賞作品
上記12団体賞のほか、優秀賞33点、佳作55点の入選作品があります。
※学校名及び学年は受賞時のものです。