人権擁護啓発ポスターコンクールは、府内の小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・特別支援学校及び外国人学校に在籍する児童・生徒が、人権をテーマとしたポスター(絵画)の制作を通じて基本的人権について理解を一層深め、人権尊重の精神を養う機会とするため、昭和59年度から実施しています。
令和2年度の人権擁護啓発ポスターコンクールには、156校から4,046点の応募をいただき、入選者が以下のとおり決定しました。
12団体賞受賞作品の紹介
知事賞
向日市立第5向陽小学校2年
草間 駿太郎(くさま しゅんたろう)さん
講評
「はなれていても ともだち」という言葉は、まさに今年の新型コロナウイルス感染症の時代を反映したポスターだと思います。コロナ禍で学校に行けず、友達と離ればなれになったことは、相当寂しかった思い出なのではないでしょうか。友達に会いたいな、という実感のこもった気持ちが絵に表われているようです。物理的な距離に負けない、気持ちのつながりを感じさせられます。明るく色彩豊かで、たくさんの友達の賑やかな声が聞こえてきそうな作品です。それぞれの人物の表情や服も描き分けられ、作者の思いが込められた力作です。
京都市長賞
京都市立嵯峨野小学校4年
稲田 明莉(いなだ あかり)さん
講評
「ありがとうはみんなの宝物」と2つのハートの中ににそれぞれ2名が手をつないでいるシンプルな作品ですが、「ありがとう」の言葉が人と人との心の架け橋になることを改めて感じさせる作品で、「ありがとう」とは素敵な言葉だと改めて感じさせる作品です。「ありがとう」を若干大きめに配置し言葉を強調しているところや、使っている色も花をイメージする優しい色を使っているなど、作者の優しい人柄と小学校4年生らしいストレートに自身の気持ちを表現しているところがこのポスターの魅力を引き立てていると思われます。
京都府教育委員会教育長賞
京都府立向日が丘支援学校高等部3年
種村 陸(たねむら りく)さん
講評
色づかいや構成が大変独創的で、思わず画面に目を奪われます。違いはあるけれど「人間は 全員同じ」という作者の気づきが伝わってきます。中央は人間の形が、周りには動物や文房具、食べ物など生活の中の事物が、一定の秩序をもって配置されています。「全ての人が平等である」ということを、明るくポップに表しています。
京都市教育長賞
京都市立下京渉成小学校6年
清水 美玖(しみず みく)さん
講評
「えがおの花をさかせよう」とお母さんとその子ども、または先生と児童でしょうか。見ている人を明るい気持ちにさせてくれる作品です。背景の暖色は暖かい気持ちを花や人は鮮やかな色と優しい色を使用して明るい雰囲気を配色を工夫して表現できているところが素晴らしいと思います。言葉も大切ではありますが、笑顔という視覚を通して人を優しい気持ちにさせることの大切さを教えてくれる作品です。
京都府市長会会長賞
京都府立福知山高等学校2年
岩崎 虹穂(いわさき ななほ)さん
講評
「『おはよう』で広がる笑顔」という言葉と、それを表す絵が分かりやすく構成されています。画面全体のかすれたような質感は、濃い色を先に全面に塗ってから、他の色を水少なめにして上から重ねることによって作り出しています。このことにより簡潔な構成ながらも画面に面白い表情が出せています。こういった手法から、様々な表現方法を知ったうえで意図に応じて創造的に活用している高校生らしい技能がうかがえます。小さな子どもにも伝わりやすい視点で、分かりやすく表現した作品です。
京都府町村会長賞
精華町立精華台小学校4年
近藤 佑磨(こんどう ゆうま)さん
講評
「みんなの笑顔を守る マスクレンジャー」と、クレヨンで濃くきっちりと書いた文字からは、作者の「迷いのない正義感」が感じられます。マスクをしてみんなの笑顔を守るんだ!という、みんなのことを思いやる強い気持ちが、絵からも感じ取れます。簡潔で力強く訴えかけるポスターです。よく見ると、背景をグラデーションにしていたり、マスクレンジャーの目のところの細やかな光の感じもよく工夫されています。また、「顔」という文字の一部が、笑っている顔になっています。大胆な中にも表現の工夫が光るポスターです。
京都府人権擁護委員連合会長賞
京都市立京都京北小中学校9年
田中 姫和(たなか ひより)さん
講評
「笑顔はあなたの優しさから」と花に水をやる二人の女性から、一人一人の行動が社会につながることをつぼみの花にたとえて表現された中学生ならではの作品と感じます。キャッチコピーでは緑色の文字の中に「笑顔」と「優しさ」は花の色にするなど配色が工夫され、キャッチコピーの間には種々様々な花がたくさん描かれています。人物の表情は水を与え喜んでいる姿、それを優しいまなざしで見守る姿を描き分け、作者の思いが見る人に強く伝わってくる作品です。
京都商工会議所会頭賞
京都市立藤森中学校1年
小柳 ひなた(こやなぎ ひなた)さん
講評
人種、性別、年齢を超えた様々な人の笑顔がこちらに微笑みかけているようで、表情が見事に描写されています。背景にある向日葵は「笑顔」を太陽のように例えて表現したのでしょうか。それぞれの人の笑顔をよりいっそう明るく見せています。配置や構図、配色もバランスよく工夫され、色の特性や主題の生かし方など中学校の美術の学習をしっかり生かして制作されていると思います。人種や性別による差別、子どもへの虐待などこのようなニュースが未だになくなることはなく、全ての人が笑顔になれる社会をと願った作者の思いが表現されている素敵な作品だと思われます。
京都府商工会連合会会長賞
向日市立寺戸中学校2年
埴山 穂佳(はにやま ほのか)さん
講評
様々な人種の違いを超えて個性を認め合おう、と呼びかけるポスターです。人種の違う人物が重ねて描かれ、周りの花々とともに非常に色彩の美しいポスターです。人物の前の余白の空間は画面に抜けを作っていて、構図も美しくまとまっています。人物の穏やかな表情が魅力的なポスターです。
京都府中小企業団体中央会会長賞
長岡京市長岡第三中学校1年
川人 梨乃(かわひと りの)さん
講評
いろいろな国の人物と、それぞれの国の花が描かれています。差別、偏見がなく、一人一人がお互いを思いやり、人権に配慮した社会をつくっていこう、という気持ちが伝わってきます。人物の顔を立体的に表したり、衣装や花などの細やかな描き込みをしたり、きっちりと色を塗ったりするなど、ポスターとしてより美しく見えるように、とても丁寧に描かれています。次年度に延期される予定のオリンピックの賑やかな雰囲気も感じるポスターで、「人権を守ろう」と前向きに呼びかけています。
京都府農業協同組合中央会会長賞
亀岡市立青野小学校1年
奥村 巴瑠(おくむら はる)さん
講評
画面からは、友達と過ごす楽しさやうれしさが伝わってきます。背景は、ピンク色の水彩絵の具をタンポに付けて、人物を残しながらポンポンポンと色を重ねづけしています。丁寧に色をつけていったことで、人物を包むやさしい雰囲気が出ています。友達っていいなあ、という素直な気持ちが表れたポスターです。
京都府社会福祉協議会会長賞
南丹市立八木西小学校5年
治田 夕希穂(じた ゆきほ)さん
講評
やさしさを箱の中のいろいろな色のハートに見立てて、それを他の人に届けています。「私たちのやさしさ」という言葉から、自分以外の他者をも含めて、やさしさや思いやりを届けたいという作者の気持ちが伝わってきます。「やさしさ」を、「求める」という受け身でもなく、「与える」という上から目線でもなく、「とどけよう」とした言葉のチョイスが光ります。
応募作品全体講評
今年度は4月当初から新型コロナウイルス感染症の影響で、学校が臨時休校になったり、分散登校になったりした時期がありました。日常生活の当たり前が当たり前でなくなったような、そういった不安な状況がありました。学校再開後も様々な制約があり、そういった状況の中で、戸惑いながらも、今この時何が大切か、何を願うか、何を伝えたいかなど、人権に思いを馳せ、たくさんの力作が集まりました。一枚一枚のポスターから、様々な思いが伝わってきました。友達の大切さや、人への思いやり、自分から動こうとする意志、気づきの大切さ、行動化への呼びかけなどのメッセージが込められていました。コロナウイルス感染症による今まで経験したことのない状況にこれまでの自分の経験を合わせて、主題を生み出している作品もありました。今年度は全体的に、よく考えられた言葉を使った作品が目にとまりました。実際に見たり経験したり感じたりしたことから生み出された言葉は、ありきたりの言葉よりも見る人の心に深く伝わります。普段の生活の中でも、新聞や電車内で見かける広告や、TVコマーシャルの中にも、絵と言葉が響き合う素晴らしい表現を見つけることができます。何か気持ちを動かされる広告やポスターの表現に出合ったとき、絵はどんな場面を切り取っているのかな、どんな言葉を選んでいるのかな、という目で見てみると、伝えるための工夫に気付くことができます。本コンクールが、人を思いやる心を育んだり、態度を培ったりするなど、人権について考える機会になればと思います。また、自分の思いを作品で表現するという図画工作や美術の学習の機会としても活用していただければと思います。ポスターを通じて、多くの人に作品に込められた人権への思いが伝わり、広がっていくことを願っています。
令和元年度受賞作品
上記12団体賞のほか、優秀賞34点、佳作54点の入選作品があります。
※学校名及び学年は受賞時のものです。