人権擁護啓発ポスターコンクールは、府内の小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・特別支援学校及び外国人学校に在籍する児童・生徒が、人権をテーマとしたポスター(絵画)の制作を通じて基本的人権について理解を一層深め、人権尊重の精神を養う機会とするため、昭和59年度から実施しています。
令和元年度の人権擁護啓発ポスターコンクールには、200校から4,465点の応募をいただき、入選者が以下のとおり決定しました。
12団体賞受賞作品の紹介
知事賞
南丹市立八木中学校2年
治田 紗也奈(じた さやな)さん
講評
「この笑顔が守れる社会になってほしい」という未来に向けたメッセージ性のあるポスターです。キャッチコピーと絵が互いの効果を高めています。社会を見つめる中学生らしい視野の広がりを感じます。読みやすい文字と、明るい色彩で見る人に希望を感じさせ、「一緒に笑顔を守れる社会にしていこう」と呼びかける声が聞こえてきそうなポスターです。
京都市長賞
京都市立桃陵中学校3年
内藤 優(ないとう ゆう)さん
講評
手をつないで輪になっている子どもたちの様子と、『「ありがとう」で広げる笑顔の輪』というキャッチフレーズの画面構成や、背景の明るい色彩など、見る人を引きつける様々な工夫が感じられます。子どもたちの表情、文字や色の細かな彩色など、絵の具や筆などの用具の特性やこれまでの経験を生かし、細部まで丁寧に表現していることからも、作者の伝えたい思いが感じられる作品です。
京都府教育委員会教育長賞
木津川市立加茂小学校4年
林 真希(はやし まき)さん
講評
年齢や性別、人種、障害の差など、人それぞれに違いはありながらも、互いに思いやりの心を育てながら、この絵のようにみんなで明るく暮らしていこう、という児童の思いが伝わってきます。中央のハートはペンで輪郭を描かないことで、柔らかさやあたたかさがかえって際立つように工夫されています。明るく明快に多様性や共生を描いています。
京都市教育長賞
京都市立嵯峨小学校5年
北川 碧以(きたがわ あおい)さん
講評
中心の人物に向かって、友達や家族、動物や生き物たち、お日さまやお月さまも、両手を広げて微笑んでおり、人物の周りには、みんなの気持ちがいろいろな色のハートの形でたくさん表されています。また、背景がオレンジ色の絵の具で温かい感じに表現されていて、「ひとりじゃないよ」というメッセージが画面いっぱいから伝わってきました。
京都府市長会会長賞
京都市立錦林小学校5年
中田 笑里(なかた えみり)さん
講評
「あなたの笑顔がわたしの支え」というメッセージの周りにはたくさんの笑顔があります。友達や家族などを思い浮かべながら、一人一人を丁寧に表現したことでしょう。この作品から、作者は日頃の学校生活の中で、たくさんの友達に支えられていることを実感し、感謝の気持ちをもって充実した毎日を送っていることを感じます。
京都府町村会長賞
精華町立山田荘小学校5年
氏家 奏凪(うじいえ そよな)さん
講評
歌を歌ったり、絵を描いたり、読書やサッカーをしたり、お年寄りと優しく触れ合うなど、様々な場面が描かれています。それぞれの人には得意なものがあり、その個性を尊重しようという気持ちが伝わってきます。それぞれの絵の背景には違う種類の花が描かれおり、離れて画面全体を見ても大きな花の形になっています。多くの場面を1つにまとめ、明るい雰囲気で仕上げています。
京都府人権擁護委員連合会長賞
宇治田原町立田原小学校1年
望月 奈々美(もちづき ななみ)さん
講評
色とりどりのクレヨンや絵の具を使い、笑顔の人物が楽しそうに描けています。花のように見えるところは、別の紙に絵の具を使ってにじませたもので、それを切り取って画面に貼っています。一人一人違う個性を表わしながら、「みんなともだち」と認め合える様子を優しい色使いと丁寧な描写で表現しています。
京都商工会議所会頭賞
京都市立百々小学校3年
藤崎 由奈(ふじさき ゆな)さん
講評
嬉しそうに赤ちゃんを抱いているおばあさんの姿を中心にして、家族がそれを温かく支えている感じが伝わってきます。「いのちをつなぐ」「いのちをささえる」ということが、親から子へ、子から孫へと受け継がれ、繋がっていくことや、それはみんなの温かい支えの中で育まれていくのだというメッセージが見る人に伝わることと思います。
京都府商工会連合会会長賞
向日市立第4向陽小学校2年
上田 航平(うえだ こうへい)さん
講評
にこにこ笑っている様子も、手を繋いでいる様子もありませんが、「友だちになりたい」という言葉を読んで絵を見てみると、一層「友だちになりたい」という児童の気持ちが伝わってくるのではないでしょうか。知らない子とどう接したらいいか分からないけど仲良くなりたい、という強い気持ちが、「友だちになりたい」という強い言葉と子どもらしい素直な絵によって表わされているように感じます。
京都府中小企業団体中央会会長賞
講評
社会の一員である様々な人が支え合っている画面の構成に工夫が感じられます。人は一方的に支えたり支えられたりしているのではなく、お互いに支えたり支えられたりしながら生きているのだということが一目で伝わってきます。全体の温かく優しい色遣いや丁寧な彩色、背景の淡い紫色などからは、人をいたわる優しい気持ちが感じ取れます。
京都府農業協同組合中央会会長賞
木津川市立加茂小学校4年
山本 駿(やまもと しゅん)さん
講評
7人が一斉にこちらへ向かって走って来ている、躍動感のある作品です。動きのある難しいポーズに挑戦しています。夜の花火の鮮やかな感じを水彩絵の具の濃淡と点描によって表現しています。背景の打ち上げ花火は、描かれた人々の協働や共創の心情を表わしているようにも見えます。みんなで仲良く協力し合い困難に立ち向かっていくような、力強さとさわやかさのある作品です。
京都府社会福祉協議会会長賞
京都市立西京極小学校5年
小玉 若菜(こだま わかな)さん
講評
仲間と過ごす楽しさ、仲間とともにいるよさ、仲間と過ごす充実感をいっぱい感じて生き生きとハイタッチをする少女の表情が素敵な高学年らしい作品です。「ハイタッチ 仲間のしるし」というシンプルなキャッチフレーズは、夏の空のような青に黄色いヒマワリの花という鮮やかなコントラストを生かして躍動感のある画面構成です。
応募作品全体講評
今年も多くの学校で取り組まれ、京都府内から4,465点の応募がありました。たくさんの子どもたちの思いや願いのあふれるポスターに出会うことができ、エネルギーをもらいました。それぞれの作品を通して、人権擁護への願いや啓発メッセージ、それを作品としてまとめる豊かな発想や表現の工夫などを読み取りながら審査を行いました。
小学校低学年では、自分と友達が一緒に仲良く遊んでいる場面など、身近なところから着想し楽しく描いたものが多くありました。発達段階的にポスターの役割を考えるのはまだ難しいですが、自分の感じたことを素直に絵に表している様子が伝わってくる作品が目を引きました。小学校中・高学年では、場面が学校や家庭などへと広がりを見せ、世界の人々が繋がっている様子を描いたものも多くなりました。
新学習指導要領では、小学校高学年で育成する資質・能力の中で、「感じたこと、想像したこと、見たこと、伝え合いたいことから表したいことを見付ける」と示されています。また、中学校1年生では、「自分を含めた身近な相手」を対象として考え、中学校2・3年生で、「自己の内面や社会の様相などを深く見つめ、社会との関わりを意識し、より多くの相手を対象として主題を生み出す」ことを大切にしています。自分の経験や実感のある場面を思い出し、「伝えたい相手」や「何を伝えたいか」などを考え、思いを膨らませていきましょう。ありきたりの使い古された表現でなく、自分ならどうやって表そうかと考えてほしいと思います。
さらに、絵だけでなく、言葉の表現も大切です。絵の力と言葉の力が互いに響き合うとき、ポスターは一層見る人の心に訴えかけるものになると思います。図工美術は、1人1人の思いや個性を大切にしています。自分だけの絵と言葉の表現をこれからも追求してほしいと思います。
これからも、本コンクールをきっかけとして人権について考え、生活や社会と豊かに関わっていってほしいと思います。そして、ポスターの展示を通じて、見る人にも作品に込められた思いが広がり伝わっていくことを願って全体講評とさせていただきます。
令和元年度受賞作品
上記12団体賞のほか、優秀賞33点、佳作55点の入選作品があります。
※学校名及び学年は受賞時のものです。