人権擁護啓発ポスターコンクールは、府内の小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・特別支援学校及び外国人学校に在籍する児童・生徒が、人権をテーマとしたポスター(絵画)の制作を通じて基本的人権について理解を一層深め、人権尊重の精神を養う機会とするため、昭和59年度から実施しています。
平成30年度の人権擁護啓発ポスターコンクールには、193校から4,617点の応募をいただき、入選者が以下のとおり決定しました。
12団体賞受賞作品の紹介
知事賞
与謝野町立加悦中学校2年
西村 知尋(にしむら ちひろ)さん
講評
「笑顔の花、贈ります」という言葉は、作者が人権について考えた結果の前向きな意思を表わしているようです。また、見る人にも、この絵のようにみんなが笑顔でいられるといいなと感じさせます。さらに、この絵のような笑顔を贈るには何をすればよいかと考えさせられます。笑顔の後ろには花々が丁寧に描き込まれており、色彩や構図のバランスも伝えたいことを表わすためによく考えられています。下の方の文字「贈ります」の一部がプレゼントの形になっているところも素敵な演出です。
京都市長賞
京都市立桃陵中学校3年
池上 清音(いけがみ さやね)さん
講評
昨今、人権問題は多様な面から取り上げられています。全ての人がハートを持っている統一感のある画面の中に、人種をはじめとした多様な人が描かれています。9つのマスの中に描かれた内容は作者がたくさん学習してきたことなのか、様々な人権に対する思いがあると感じさせられます。すっきりとした画面の中に、見る人が様々な人権問題に目を向けさせられるような、思いの詰まった作品だと感じられます。
京都府教育委員会教育長賞
精華町立東光小学校5年
井上 大暉(いのうえ ひろき)さん
講評
明るくすっきりと伝えたいことがまとめられたポスターです。左右対称の、安定感のある構図に、「信じあえる仲間は宝」というはっきりした文字が配置されています。中央のひまわりの花びらの繊細な色の変化や、ひまわりの中央の管状花に見られるスタンピングの技法や、背景の黄緑色に薄くつけた白色など、これまでの図画工作科で習得した技法を駆使して、伝えたいことを中心にして画面をまとめられています。自分の周りの仲間を大切にしたい気持ちがよく伝わってきます。
京都市教育長賞
京都市立周山中学校3年
髙林 ゆり(たかばやし ゆり)さん
講評
『「ありがとう」笑顔になれるステキな言葉』とポスターの言葉どおりに、思わず笑顔をもらえるような描かれている子どもの笑顔がとてもすてきな作品だと思われます。構図を見ると、二人の少女は作品を見る私たちを見上げるような視線です。子どもの笑顔は我々大人にとっても非常に大切にしたいものでもあります。そんな気持ちを大人から子どもまで呼び起こさせてくれるような、表現力豊かな作品だと感じられます。
京都府市長会会長賞
宇治市立宇治小学校2年
三木 穂夏(みき ほのか)さん
講評
水泳の楽しさや水の動きを感じる力強い印象の作品です。中央の少女が元気よく泳いでいて、画面から飛び出してきそうです。この少女が力強く安心して泳ぐことができているのはなぜかというと、それは、両手でしっかりと浮き輪を持ってくれている画面左の人の存在があるからなのでしょう。その安心感の中で思い切り泳げる楽しさが、画面から伝わってきます。みんな見守られて大きくなっているんだ、という児童自身の気付きが伝わってくる作品です。上空から見下ろしたようなアングルも、とても斬新です。
京都府町村会長賞
相楽東部広域連合立笠置中学校3年
割石 空良(わりいし そら)さん
講評
画面には、様々な人物が描かれています。障害の有無や人種、性別の違いなどを認め合い、共生していこうとする作者の思いや願いが感じられます。これから開催されるオリンピックを意識したような場面設定や、誰もが勝ち負けなく一直線に並んでいるようにしたところなど、伝えたいことを表わすためによく工夫されています。トラックを前に進んでいるところも、共生社会が力強く前進している様子が表されているようです。
京都府人権擁護委員連合会長賞
京都市立久我の杜小学校1年
豊澤 虹夢(とよさわ ななみ)さん
講評
低学年の子どもたちの身近な生活の中にある「人権」を表現しています。「ともだちとなかよくすると楽しいな」、「花や虫たちも大切なともだちだよ」という気持ちが、人物の満面の笑顔や、花や虫たちの楽しそうな様子、明るい色づかいから伝わってきます。
京都商工会議所会頭賞
京都市立西院小学校1年
太田 千鶴(おおた ちづる)さん
講評
1年生の子どもたちは、小学校に入学してたくさんのともだちや先生、学校や地域で見守ってくださっている方々に出会います。口を大きく開いて、元気いっぱい挨拶している様子から、「みんなに笑顔であいさつをしたいなぁ」「いつもありがとう」という気持ちを感じます。
京都府商工会連合会会長賞
井手町立泉ヶ丘中学校3年
山本 澪(やまもと みお)さん
講評
人々が思いやりを持ち、助け合って生きている様子が描かれています。人と人との絆を、様々な関わりを描写することで表しています。人々がにこにこほほ笑んで視線を合わせているところなど、表情も工夫されています。身の回りの出来事から色々な光景を抽出し、1枚にまとめ上げています。背景が中央に向かって明るくしてあり、人々の心の中の温かな気持ちを表わしているようです。
京都府中小企業団体中央会会長賞
京都市立柊野小学校6年
中江 美柚(なかえ みゆず)さん
講評
「命」の大切さと感謝の気持ちが伝わってきます。周りの家族やともだち、生き物や野菜など、身近なところで自分を支えてくれていると感じるものを表しています。全体のバランスや色の組み合わせを工夫し、丁寧な絵の具の使い方で見る人に分かり易いポスターです。
京都府農業協同組合中央会会長賞
京都市立桃山中学校1年
今中 愛(いまなか あい)さん
講評
「笑顔をつなぐ」「命をつなぐ」、「つなぐ」という言葉はここ数年、様々な場面で使われている言葉で人間どうしのつながりの大切さを再認識されているかと思います。人とのつながり、命のつながり、家族のつながり、世代間のつながり、国のつながりなど、笑顔に満たされた一枚の絵に様々な作者の思いが込められた、表現力豊かな作品だと感じられます。
京都府社会福祉協議会会長賞
府立福知山高等学校附属中学校2年
北島 凜風(きたじま りっか)さん
講評
子どもと犬がほほえんでいる、やわらかな表情がとても印象的な作品です。きっと、このまわりにもたくさんの笑顔があって、それぞれがお互いを思っているような気がします。思い付いたことすべてを絵に表すのではなく、どう切り取ったらより伝わるかが考えられています。大好きな君の笑顔がこれからも見られますようにという願いや、こんな笑顔が見られる社会にしたい、という作者の思いを感じます。整理された画面構成や、丁寧に色を混ぜて作ったやわらかな色調で、見る人を温かな気持ちにさせてくれるポスターです。
応募作品全体講評
今年も京都府内から、4,600点を超える力作が集まりました。それぞれの作品を通して、人権擁護への願いや啓発へのメッセージ、それを作品としてまとめる豊かな発想や表現の工夫など、たくさんの子どもたちの思いや願いを感じながらの審査は楽しく、また賞を決めなければならない難しい時間でもありました。
小学校低学年では、仲間と一緒に遊んでいる楽しい気持ちなど、自分や自分と近い人たちとの関わりの中からテーマを見出し、絵に表すこと自体も楽しみながら、夢中になって描いた様子が伝わってきました。小学校高学年では、学校や地域へ関心が広がり、伝えたいメッセージも多様になります。それに合わせて構図や色づかい、材料や用具の使い方を工夫するなど、自分なりの意図をもって表現している作品が目を引きました。これらに加えて、入選・入賞している作品は、伝えるための技能も持ち合わせているものが多かったです。
中学生や高校生になると、ポスターとしてより伝わるものにするために、伝えたいことを焦点化し、それを表わす効果的な色彩や形、構図、表現方法などを選択して、訴求力や視認性を考えながら効果的に表そうとしている作品が多くありました。特に、伝えたいことや強調したいことがはっきりと取捨選択され1枚にまとめ上げられた作品が印象に残りました。
全体を振り返って、今回は特に、ポスターの絵だけでなく、ポスターに入れる文字についても、しっかりと練られた作品が多くなっていました。このポスターコンクールは、文字を入れることが条件になっており、文字と絵との相乗効果で伝えるポスターが求められています。人権について何を考え、その思いや願いの中から何を伝えるか、どのように描いて伝えるか、伝えたい言葉は何かなどをよく考えて紡ぎ出された言葉や絵は、見る人の心に届きます。残念ながら、素晴らしい作品でしたが、漢字の間違いにより、惜しくも選出できなかった作品がありました。しかし、経験から生まれた斬新な視点や、オリジナリティー溢れる言葉が多くあり、絵とともに印象に残りました。
これからも、本コンクールをきっかけとして、優しさや思いやる気持ちを大切にして、主体的、協働的に問題を発見し、解決していくにはどうしたらいいか考え、生活や社会、世界と豊かに関わっていってほしいと思います。そして、ポスター展示を通じて、見る人にも作品に込められた思いが広がり伝わっていくことを願って全体講評とさせていただきます。
平成30年度受賞作品
上記12団体賞のほか、優秀賞33点、佳作55点の入選作品があります。
平成30年度人権擁護啓発ポスターコンクール受賞者一覧(PDF形式472KB)
※学校名及び学年は受賞時のものです。